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簡単に言ってしまえば、私達は「元恋人」。
だけどそれを口にしない光輝くんはあの頃の私みたいに認めたくないんだと思う。
もう元には戻れないことを。



佐「即答できない関係ならお引き取り下さい。
この子、嫌がってるんで。」

光輝「…そちらこそ、彼女とどういう関係ですか」

佐「同僚です。職場の。」



同僚…
彼の言葉に間違いはないのに、寂しく感じるのはどうして?
さっくんの真っ直ぐな視線に気押されたのか、少し私と距離を取った光輝くん。
だけど、改めて私に向き直った彼が今度は何を言ってくるのか怖くて、堪らず目の前のさっくんの服を掴んだ。
優しいさっくんは気を遣って私の前から退いてしまうかもしれないと思ったから。



光輝「……どうしても、考え直してはくれない?」

「だから、もう…」

佐「…いい加減にしろよ。」



雨音さえ怯むような、怒気の籠った低い声。
怖いはずのそれは何故か怖くないどころか、私の冷え切った心をじんわり溶かす。



佐「Aちゃんがどんだけおまえのこと好きだったと思ってんだよ…
強がりで意地っ張りだけど、根は寂しがり屋なのに……
散々寂しい思いさせといて今更やり直せると思うなよ。」



おまえがつけた傷は消えない。ってキッパリ言い切ったさっくんに、次から次に涙がポロポロ溢れて止まらなかった。



光輝「っ…ごめん、本当にごめん……」



泣きそうな顔で謝り続ける彼に首を振った。



「もっ…もういいから、私と…別れてください……」



自分じゃどうしたって止められない涙。



光輝「そんなに泣いてるとこ…初めて見た」



もうほんとにダメなんだね…って呟いた光輝くんはもう一度ごめんって口にしてから駅へと向かって行く。
大きくて広いと思っていたはずの背中はすごく小さく見えた。

これで本当にさよなら。
ずっとずっと好きだった。
大好きだから、辛かった。寂しかった。
だけど今は…



佐「帰ろ。風邪引いちゃうよ」



服を掴んでいた手が優しく解かれて、代わりにきゅっと温もりに包まれる。



佐「頑張ったねぇ」



いいこいいこ。って頭を撫でられたら余計に涙が止まらない。全部このまま溢れちゃいそうだった。

私の帰る場所をくれたのも、涙を拭ってくれるのも、抱きしめてくれたのも…うまく笑えない時、ずっと側に居てくれたのはさっくんだった。

私なんかの為に一生懸命になってくれるヒーローみたいなさっくん。

好きになっちゃダメなのに…私、この人が好きだ。

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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時

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