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「勝手だって思われても仕方ないし申し訳ないとは思ってるけど…私はもう貴方と話すことは何もない」
光輝「…見たんでしょ、?あの日…」
雨に掻き消されそうに頼りない声色で放たれた言葉で、彼の言う
やけに耳に残る猫撫で声も、私だけに向けられていたはずの彼の愛おしい人を見る眼差しも…全部が不快で苦しい。
ああ、頭が痛い。
光輝「俺…Aが居ないとダメなんだよ……
今まで散々裏切って好き勝手してきて、都合良いこと言ってるのは分かってるけど…」
「っ…」
やめて。やめてよ…
こんな浅はかな言葉で簡単に揺れる自分が嫌なの。
「もう…遅い……」
やっと見つけたの。
「帰っておいで」って私をあたたかく迎えてくれる家を。
あの賑やかな家が私の家。
光輝「…そうだよな。今更だよな。
…ほんと自分でもバカだと思うけどAが急に居なくなって…その時やっと気付いたんだよ。
Aはずっと俺から離れないって胡座かいてたんだって…」
本当に馬鹿じゃないの?信じらんないって言ってやればいいのに、言えない。
だって彼の言う通り、私は光輝くんから離れられなかったんだから。
誰が見たって私達の関係は冷めきってたのに…それでも諦めきれなかった。
ひとりぼっちになりたくなかったの。
雨で冷たくなった光輝くんの手が、傘を持っていない方の私の手を取った。いつの間にか固く握りしめていた手は彼に触れられた途端力が抜ける。
ダメ。流されちゃダメ。ダメなのに…
ガンガン殴られてるみたいに痛い頭じゃもう何も考えられない。
この手を握り返せばまたやり直せる…?
光輝「お願いA…帰って来て…」
こんな余裕の無い光輝くんは初めて見た。
いつも私が追いかける立場だったから。
どうしよう。振り払えない。
でも、やだ。誰か…
佐「Aちゃん…?」
「さっくん……」
とにかくここから掬い上げて欲しかった。
そんな時に君は現れる。
佐「こんな雨の中なにしてんの?おいで」
にこって、雨雲さえ吹き飛ばしてしまいそうなあたたかい笑顔に引き寄せられるみたいに…
私は手を、振り払った。
光輝「っ…」
苦しそうな顔をした光輝くんを見たくなくてさっくんの隣で俯く。するとさっくんが一歩私の前に出た。
佐「どちら様ですか?」
光輝「Aの…」
そこで彼が口籠る。
佐「彼女のなんですか?」
貴方は私のなに?
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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時