・ ページ30
佐久間side。
.
日曜の昼下がり。
お腹いっぱいになった後はみんなで片付けをして、部屋に戻ったり出掛けた奴も居れば、翔太とユイちゃんは庭に繋がる窓を開けてそこで何やら話し込んでる。
阿部ちゃんとAちゃんはみどり先生、阿部ちゃんの母ちゃんを送りに行った。
手持ち無沙汰になっちゃったし…アニメでも観ようかなーってリビングに行ったら見覚えの無い鍵が落っこちてた。
そういや…さっきみどり先生ここで荷物の整理してたな。
さっき出たとこだし走れば追いつくかも…
「翔太!ちょっと出て来る!」
渡「ん?おお、」
突然呼ばれた自分の名前に戸惑う声が聞こえたけど、お構い無しに家を飛び出した。
阿部ちゃんとAちゃんに電話を掛けてみても2人とも繋がんない。話し込んでんのかな。
駅までの道を走っていると少し先に3人の後ろ姿が見えた。
良かった。間に合った。
「おー…」
おーいって。
呼ぼうとしたのを咄嗟にやめた。
だって…なんで?
心配そうにAちゃんの顔を覗き込むみどり先生と、Aちゃんの頭に乗せられる阿部ちゃんの手。
遠くてよく見えないはずの小さな肩が震えているような気がした。
もしかして、泣いてんの?
引っ越し蕎麦を食べた日の夜。
助手席で泣いていたAちゃんが頭に浮かぶ。
最近泣き虫になったね。
前までは弱いとこなんて見せてくんなかったのに。
…強がってるって俺にはバレバレだったけど。
.
こっそり、後をつけるみたいに距離を詰める。
側から見たら怪しい奴だけど…仕方ない。
声掛けるタイミング、見失っちゃったんだもん。
3人は俺に気づきそうもなくって段々話し声が聞こえて来た。
みどり「…いつでも頼ってね」
椿「いつも…本当にありがとうございます」
みどり「Aちゃんが本当に娘になってくれたら良いのにね。亮平なんとかならない?」
阿「なに馬鹿なこと言ってんの。」
親子のやり取りを聞いてふふ、って控えめなAちゃんの笑い声。良かった。笑ってる。
にしても…阿部ちゃん満更でもないじゃん。
みどり先生に対しては呆れたみたいに言ってるけど、ずっと一緒に居るから声で分かる。
"本当に娘に"って…つまりお嫁に来てよってこと?
みどり先生がAちゃんのこと可愛がってるのは知ってたけど…それとこれとはまた別の話でしょ…
って、なんでモヤモヤしてんだ。俺は。
996人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時