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なんとか遅刻せず遅番を終えて帰宅すると、リビングのドアを開けた瞬間「おかえりー!」って飛び掛かる勢いで迎えてくれたさっくん。
負けじとツナが足元に擦り寄って来た。可愛い。
「ただいま」
佐「ねぇ!なにあれ!」
ツナを抱き上げて頬擦りしていた私にズイッと迫るさっくんの携帯の画面。
そこには今朝私が作ったお弁当の写真が表示されていた。
佐「佐久間さん腹ペコだったのに可愛すぎて食べれなくてなんの拷問かと…」
「えぇ?食べてもらう為に作ったんだから食べてよ」
佐「一番最後に目瞑りながら食べた」
「んふふ 大袈裟だなあ」
佐「いやマジなんだって!」
あながち蓮くんの言葉は間違いじゃなかったのかも。
喜ぶかなーと思ってツナとシャチの形にしたおにぎりはどうやら逆に悩ませてしまったみたいだ。
「…美味しくなかった?」
佐「そんなわけないでしょ!」
「なら良かった」
佐「大変だったでしょ?ありがとね」
ほわって蕩けるように笑うから心臓がきゅ、ってなった。
向「良かったなあ、念願の手料理」
ソファーに座ってこちらの様子を伺っていた康二くんが肩の荷が降りたみたいに言う。
なんでかずっと気にしてくれてたもんね。
「料理って言っていいのかって感じだけど…」
佐「また食べたいな〜」
そんなきゅるきゅるの目でおねだりされたら…ねぇ、
「あんなので良ければ作るよ、いつでも…」
佐「んふ やった〜」
なんだろう。むず痒い。
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次の日。
仕事に行ったら朝の合同保育の時間にさっくんと同じクラスの先生がスス…って近寄って来て。
「ねぇ、佐久間先生彼女出来たっぽいの」
「え?」
声を潜めて突拍子もないことを言う。
「昨日の遠足でめっちゃ可愛いお弁当持って来ててさ…
何枚撮んの?ってくらい写真撮ってすっごい大事に食べてたのよ…」
ドキッと鼓動が早くなる。
同じ家に住んでることは言ってないし、私が作ったってバレたらまずい。
「…でも佐久間先生、去年も美味しそうなお弁当持って来てましたよ?」
そう。康二くんお手製の愛妻弁当。
これでさっくんが家庭的ってイメージに繋がればと思ったんだけど…
「いーや。あれは彼女だね。
だって本当に嬉しそうだったもん…」
佐久間先生かっこいいなーって思ってたのに!と嘆く先輩に今度は違う意味で鼓動が早まった。
…変なの。
他にもご飯を食べてくれた人はいるのにさっくんの時だけ照れ臭いなんて。
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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時