9月、修学旅行と文化祭準備 ページ8
暑さが少し減った9月。
「修学旅行、かぁ……」
自室で頬杖を突き、小さく呟いた。
もうすぐ、2、3年生の修学旅行が始まる。そうなると、修学旅行に付きっきりになって生徒や先生達が少なくなってしまうのだ。それがなんとなく寂しく思えた。
自分が生徒だった頃は学習だとか色々をちょっぴり忘れて楽しんでいたと思う。体験したことは確かによく覚えているので、良い学習にはなったはずだ。
先生や生徒が減って少し静かになった学園を歩くと、やはりなんだか寂しかった。
……なんでだろ。思っていたよりも寂しい気がする。何かが物足りないような……?
×
それから2、3年生の修学旅行が終わって、文化祭準備が始まる。来月の文化祭に向けて生徒達が出し物の準備を行うのだ。
クラスでの出し物は自由にさせた。何をするのか気になってしまうけど、生徒達を信用する。それに、何か変なものになったとしてもきっとみんなが納得の上で選ぶだろうから、生徒達が楽しいならそれで良いかな、と思えたのだ。
文化祭準備の時間は生徒達が楽しそうに見える。授業もそれくらい楽しんで真剣に受けてくれても良いのに、と思うけどまあ仕方ないよね。わたしも文化祭準備の時間はとても楽しかったし。
あとは生徒達に任せて、わたしは授業準備のために錬金室に戻る。
その最中、見覚えのある後ろ姿が見えた。思わず小走りで駆け寄る。
「ヘッケンローゼ先生」
「……何でしょうか。今は文化祭準備の時間であって休み時間でも休日でもありませんよ。無駄な私語は厳禁です」
呼びかけるとヘッケンローゼ先生は足を止めて振り返った。だけれど、いつも通りに冷ややかに返された。
「……何、笑っているのです」
「え?」
訝しげに指摘され、思わず口元を抑える。わたし、笑ってたの?
「……自覚が無いのなら、良いです」
呟きヘッケンローゼ先生は顔を背けた。そして先程と同じように歩き出そうとする。
「あ、ちょっと待って、ください!」
わたしも慌てて後を追いかけた。
どうやら、彼は文化祭準備を生徒達に任せて三年の職員室に戻ろうとしていたらしい。わたしと一緒だ。
「何か用事ですか」
「修学旅行について聞きたくて」
わたしとヘッケンローゼ先生は横並びで歩く。
「言う事は何も無いと思いますが」
「来年の予習をしたいんです」
そうしてわたしはヘッケンローゼ先生から(半ば強制的に)修学旅行の話を聞き出すことに成功した。
彼から話を聞けたのがとても楽しくて嬉しかった。
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時